まぐろぐ

ゆるゆる備忘録。

神出鬼没なあいつとの闘いの記録

それは夜、突然起こった。

 

テレビ台の下から黒光りする物体が。え、と頭が真っ白になっていると、そいつはちょこちょこと早くもベッド付近まで近づいていた。

 

家で遭遇したくない虫ランキング第1位(私調べ)、ゴキブリである。

今からそいつとの闘いを書こうと思うのだが、「ゴキブリ」という名前自体も嫌すぎるので「G」とさせてもらう。

 

私は人生でGにあまり遭遇したことがない。というか、何回だったら頻度が高いのか分からないが、初めて見たのは大学生の時に住んでいたアパートだった。それ以来、Gを生で目撃したことはない。

だから今回で2回目のご対面である。

 

最初に思ったのは、これは本当にGなのか、という疑いだった。コオロギか、そんなことを呟いた。

初めて出会った時も同じことを思ったのだが、どう見てもテレビや写真で見たことのあるGである。だから、この感情は「私の目に映るのはGだけど、Gだと断定したくない、信じられない」という愕然とした思いからである。

 

そんな思いに囚われていたら、あろうことか侵入者を見失ってしまったのだ。

姿が見えないのは非常に怖い。Gが別に被害を与えてくるわけではないのだが、存在があるだけでこの部屋を占拠された気分になってくる。

 

この部屋に引っ越してきて3ヶ月弱、網戸やドアの隙間からの虫の侵入には気を付けていたつもりだった。

しかし私もどこか気が緩んでいたのだ。

私の住むマンションは道路沿いに建っているし、部屋はそれほど下の階でもないし、まあまあ都会だから、虫なんて縁がないと。

そんな私の最大の気の緩みは、Gと戦う術を持っていなかったことだ。つまり、Gを一瞬で退治できるあの緑のスプレーとか、Gを近づけないあの黒いやつとかを購入していなかった。

 

私は丸腰の上、姿を見失っている。万事休すかと思われた。

しかしさすがそこそこ都会、近くにコンビニという、なんでも売ってる万能店があることを思い出した。あのスプレーを買いに行くしかない。

私はGに一時休戦を申し入れ、コンビニに直行した。そのコンビニは、まるで私が来るのをわかっていたかのように、入ってすぐの棚にG撃退用スプレーを置いていた。私が昔お世話になった緑のスプレーは売ってなかったが、この際退治できるならなんでもいい。

私はスプレーを掴み、そのコンビニにお礼を込めてコーヒーも一緒に購入した。まさに近くて便利、である。

 

帰宅し、さっそくスプレーを床中に撒き散らした。結局、Gの姿を見つけることができなかったため、目撃したリビング以外の部屋にも散布する。これでもう大丈夫。安心してコーヒーを飲んでいた時だった。

 

かさかさ、という音がして、脱衣所のドアの隙間からピンピンしているGが現れた。嘘か、と思ったがマジだった。私はスプレーを直接噴射したが、なんと動きが弱まらない。あの緑のスプレーなら一瞬なのだが、妥協したせいか?

もうどうしようもなくなって、ずっと噴射していたら、Gも観念し、触覚をおろおろさせ始めた。そして、私はGに勝利したのである。

 

今回学んだのは、どんなところに住もうが油断は禁物だということだ。だから私は、今度薬局に行ってあの緑のスプレーや黒いやつを買いに行こうと思う。